今朝も、世界は白一色に塗り潰されていた。 北国の冬は容赦がない。
重く湿った雪をスコップで撥ねるたび、全身の節々が軋みを上げる。
作業終わりに、昨日休憩室でバナージ(部下)が話していた「ラファエル」という男の発言が頭をよぎった。
「一般人は黙っていろ。Xを取り上げろ」 世間は案の定、その傲慢さに火を焚べて盛り上がっているようだ。
だが、凍てつく朝にひとり雪と格闘していると、その言葉は私には、ひどく別の響きを持って聞こえてきた。
それは「選ばれし者の傲慢」などではない。
もっと切実で、もっと惨めな……「助けてくれ」という、闇からの悲鳴だ。
雪を撥ね、一息つく。
かつての私にも、あんな風に牙を剥かなければ生きていけない時期があった。
家族の重圧、理不尽な暴力、逃げ場のない孤独。
私は拳を振るい、相手の看板(制服)を奪うことで、自分を「特別」な誰かだと思い込もうとした。
そうして「鬼の仮面」を被らなければ、内側に広がる底なしの闇に飲み込まれてしまいそうだったからだ。
だから、彼の「金色の仮面」の下にあるものが、透けて見えてしまう。
「自分は特別だ」と線を引き続けなければ、自分の存在価値を維持できない恐怖。
自分を育んだ「一般人」という土壌を否定しなければ、今の成功が虚像だとバレてしまうという怯え。
彼は今も、終わりのない自転車操業の中で、バットを振り回し続けている少年のままだ。
スコップを地面に突き立てる。
今の私は、あの頃の自分が喉から手が出るほど欲していた場所にいる。
金色の仮面も、鬼の看板も持たない、ただの「一般人」。
昨日、若手と馬鹿話をしながら笑い合い、帰宅すれば不味いエリクサーが待っている。 そんな泥臭い日常の中に、確かな手応えとしての「平穏」がある。
ラファエル氏。
君が今飲んでいるシャンパンは、どんな味がするのだろう。
私が今、作業の合間に飲むこの冷たいアイスコーヒーより、本当に美味いのだろうか。
君がいつか、その重い仮面を脱ぎ、冷たい雪の上に膝をつく日が来たなら。
その時初めて、君は「奪わなくても手に入る幸せ」があることを知るのかもしれない。
もっとも、この雪の重みと冷たさに耐え抜く覚悟が、今の君にあるのなら、の話だがな。

……。
いや、待て。 そんな殊勝な考えも、この降り止まぬ雪の前では長くは持たない。
まずい……。 一向に衰えぬ雪の勢いのせいで、私のメンタルが汚染され始めている。
センチメンタルな感傷を、暴力的な白に塗り直さなければ。
あーーー!!! はーやーく、晴れやがれ!!!
……。
叫んだところで、雪が止むわけではない。
それがこの世界の理だ。
荒ぶる心を鎮め、汚染されたメンタルを浄化するには、結局のところ、地に足をつけた日常に戻るしかない。
かつて奪うことでしか自分を満たせなかった私は、今、一杯の温かいココアを「自分で淹れる」ことで、自分を取り戻している。
余計な虚飾のない、純粋な苦味と甘み。
これが、仮面を脱いだ「ただの人間」にふさわしい、本当の平穏の味だ。
(ルイボスティーといいココアといい…温活しすぎだな…)
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