深夜1時。静寂を切り裂き、スマホがけたたましく鳴り響いた。 「あの馬鹿上司、まだ諦めきれんのか……」 不快感とともに手に取った画面には、職場の名が暗黒の中に浮かび上がっていた。
「主任! 大変です!」 夜勤中の部下からの悲鳴に近い声。 「落ち着け。職場付近で倒木でも発生し、公用車を破壊して道を塞いだとでも言うのか? ははは……まさか」
「どっちもです!」
言霊とは恐ろしい。二つの緊急事態が同時多発していた。 私は冷徹に返した。 「我は待機当番ではない。管理職どもが莫大な手当をもらって待機しているはずだ。筋違いではないか」
しかし、すぐに察した。目の前の暗黒が私を飲み込む。 そう、『ギャラクシアン・飲み会』だ。奴らは今、毒に侵され、小宇宙(コスモ)を使い果たした死体と化しているのだ。
「……くそが! 今向かう!」 はしたない言葉を吐き捨て、1時20分、私は猛吹雪のホワイトアウトへ車を走らせた。
吹雪の中の回想:自慢の息子と、使い捨ての私
一寸先も見えぬ闇の中、私は兄が亡くなった日のことを思い出していた。 経営センス0の板長。父の自慢の息子。借金まみれで見栄を張り、実家に逃げ帰ってきた「自慢の息子」。
兄が亡くなった一報を入れた亡き母は、私にこう叫んだ。 「どうすんのよ! 朝起きたら亡くなってたのよ! どうすんの!」
冷酷だと言われるかもしれないが、私はこう返した。 「だからどうした。亡くなったらそのように対応すればいい。これで甥や姪は、兄の生命保険で大学に行ける。あいつのクソのような人生から、ようやく子供たちが救われたんだ。良かったな」
「人でなし! 亡くなった兄を労わる心はないのか!」と母は泣いた。 だが、私は問いたい。「お前たちは私を労わったか? 愛したか?」
葬儀は最悪だった。見栄とプライドの塊である父は、家族葬で済むはずの規模を300人の参列者を呼ぶ大博覧会に変えた。 終わった後の香典集計。費用が賄えるはずもない。もう一人の兄に父が金を無心すると、「今は資金繰りが厳しくて」とブランド服を着た兄は逃げた。
すると父は私を向いて言った。 「そうか、社長は大変だからな。時雨、お前はいいな? 分かってるな?」
私に何をしろというのか。何かが弾け飛び、父の胸ぐらを掴みかかった……そこで回想は途切れ、私は倒木の前に立ち尽くしていた。
降臨:チェンソーマン
職場への道は巨大な倒木に封鎖されていた。私は車を降り、チェーンソーを手に取った。 静まり返った雪道に、金属が擦れる音が響く。
「……動けよ」
スターターロープを迷いなく引き抜いた。 瞬間、静寂は切り裂かれ、腹の底を揺さぶる爆音とともに、私の腕は凶悪な「鋼の刃」へと変貌する。 立ち塞がる巨木に対し、私は咆哮とともに回転する刃を叩きつけた。
「ハハハッ! もっと硬くねえと、腹いっぱいにならねえだろ!」
切り屑が雪のように舞い、樹液が顔を汚しても、私は笑っていた。 一刀両断。 自重で崩れ落ちる巨木の断末魔を、爆音でかき消す。
「見てろよ、クソったれな大木。俺のチェンソーで、バラバラの薪にしてやるからよお!」 「食え! もっと食え! 最高のジャムパンを食うためなら、これくらい朝飯前だぜ!」
浄化、そして聖水へ
作業が終わったのは朝の7時。 そこへ、五感を喪失した二日酔いの群れが出社してきた。 「いやー! 時雨! 悪い悪い!」 例の上司だ。
冷え切った身体と、過去の記憶で凍てついた心。私は限界だった。 「覚悟しておけ。お前は今年度中に管理職から引きずり下ろす。仕事の責任も理解できぬ膿は、出し切らんとあかんな」
これで奴の二日酔いも吹き飛んだだろうか。 大事にされれば恩で返し、雑巾のように扱われれば憎しみで返す。 簡単なことなのに、私の親も、この上司も、なぜそれが分からないのか。
世界には、我が子に無償の愛を注ぐ人々がいる。その姿を見ていると、心が安らぐ。 私も、娘に対しては常にそうありたい。ただ、度が過ぎて「ファザコン」にならない程度に、大切に守っていこうと思う。(16にもなって父にべったりなのが非常に不安…)
さて、荒んだ精神をルイボスティーで温め直そう。 今日は……また、何本か髪が抜けたかもしれないな。ははは。